九州の港町に暮らす女子高生・岩戸鈴芽が、廃墟に佇む「扉」を巡って椅子の姿になった青年・草太と日本各地を旅する新海誠監督のロードムービー。宮崎・愛媛・神戸・東京・東北と、震災と地続きの土地を縦断しながら、扉を閉じる「戸締まり」の旅が描かれる。
「すずめの戸締まり」の聖地は、鈴芽の故郷である岩手県沿岸部から、旅の起点となる宮崎県、四国・神戸を経て東京へと至る27か所が、九州・四国・近畿・関東・東北の5地方にわたって点在する。新海誠監督の作品の中でも移動距離が最も長く、フェリーで海を渡る場面や新幹線での移動そのものが「戸締まり」の旅を体感させる構成になっている。モデル地の多くはファンの考察に基づくもので、複数の候補地が競合するケースも多いため、断定的な「聖地」ではなく参考にされた可能性がある場所として巡るのがこの作品に合った歩き方だ。
宮崎県日南市の日南海岸は鈴芽が暮らす港町のモデルとされ、大分県臼杵市の高校・踏切は通学路の参考地。旧豊後森機関庫は最初の「後ろ戸」を見つける廃墟のイメージソースの一つで、湯平温泉は冒頭の廃墟温泉街の候補地(熊本の別候補と競合)。臼杵港・佐賀関港は九州から四国へ渡るフェリー乗船地のモデルとされる。
八幡浜港で四国に上陸した後、大洲城、JR下灘駅、大鳴門橋・明石海峡大橋と橋を渡って神戸へ入る。神戸では新神戸駅、二宮商店街・東山商店街のアーケード、神戸おとぎの国の観覧車(配色まで一致する最有力モデル)まで、下町の商店街から観光地までが混在する。橋のモデルは明石海峡大橋・大鳴門橋の二説があり断定できない。
御茶ノ水・聖橋周辺は東京に「扉が開く」街として描かれ、神田川越しに中央線・総武線・丸ノ内線の3路線が交差する景観が印象的。東京駅は新幹線でさらに旅を続けるシーン、順天堂医院は環が力尽きて入院するシーンのモデル、牛ヶ淵は東京の「後ろ戸」の在り処としてファンが考察する候補地(公式設定ではない)。
岩手県沿岸部は鈴芽の故郷そのものの参考エリアで、三陸鉄道「織笠駅」は旅の終着駅のモデルとして山田町観光協会が公式に紹介している。山田湾展望広場・宮古市赤前のレプリカは劇中シーンの実際のロケ地ではなく、震災復興と観光振興を兼ねて地域が整備した記念施設という位置づけで、道の駅大谷海岸も候補地の一つとして挙げられている。
旅の全行程をなぞるなら宮崎からスタートし、フェリーで四国・八幡浜港へ、新幹線・特急で神戸・東京・東北へと進む長距離ルートになる。1回の旅程で全エリアを回るのは現実的ではないため、地方ごとに分けて訪れるのがおすすめ。
九州・四国の港町は台風シーズン(8-9月)の急な天候悪化に注意。東北エリアは震災遺構を含むため、訪問時は地域・被災された方への配慮を最優先したい。