ダイジン目撃シーンのモデル
肱川のほとりにそびえる木造復元天守。愛媛に上陸した鈴芽たちが猫の姿のダイジンを目撃するシーンのモデルとされる、城下町のシンボル。
大洲城の天守がいつ建ったかは諸説あるが、江戸初期の1617年頃に完成したとされる四層四階の建物は、1888年(明治21年)、老朽化と構造上の欠陥を理由に解体された。城下町のシンボルを失った空白は長く続いたが、市制施行50周年を記念する事業として復元計画が動き出す。明治期に撮影された外観写真や、大洲藩の作事棟梁・中村家に伝わる天守雛形(木組みの模型)が資料として残っていたことが決め手になり、建築基準法の適用除外を得たうえで、2004年、日本初となる本格木造復元天守が完成した。工事費は約13億円、市民からの寄付も多く寄せられたという。国土技術開発賞を受賞するほど評価された復元は、単なる観光施設の再建ではなく、町が城の記憶を取り戻す作業でもあったのだろう。この復元は天守単体ではなく、渡り櫓でつなぐ複数の櫓を含めた「複合連結式」の天守群として行われた点も特徴で、単独の塔よりも城郭としての奥行きを感じさせる構造になっている。
天守は肱川沿いの高台に建ち、川面越しに見上げる姿は大洲市のシンボルとして親しまれている。城の足元に広がる城下町を合わせて歩けば、天守の存在感がどれだけ土地の風景を決めているかが実感できるはずだ。
映画『すずめの戸締まり』では、四国に上陸した鈴芽たちが猫の姿のダイジンを目撃する場面の背景に、肱川越しに眺める大洲城と城下町の景観が参考にされたとされる。
JR予讃線「伊予大洲駅」から徒歩約20分。天守内部は靴を脱いで見学する有料施設で、木の香りが漂う復元建築そのものが見どころになっている。天守の最上階からは肱川と城下町の町並みを一望でき、混雑時は入場までに待ち時間が発生することもある。開館時間や休館日は事前に公式サイトで確認しておきたい。
アクセス: JR予讃線「伊予大洲駅」から徒歩約20分