渋谷のカフェ・映画館が並ぶ坂道
渋谷区宇田川町にあるカフェ・映画館が並ぶ坂道商店街。上京した仁菜たちが渋谷を歩くシーンの背景に登場する。
渋谷駅から徒歩3分。井の頭通りから渋谷パルコへとのぼる、わずか100メートルほどの坂道がスペイン坂だ。大使館が近いわけでもなく、その名は一軒の喫茶店から生まれた。1975年、この坂道で喫茶店「阿羅比花」を営んでいた店主が、店内をスペイン風にしていたことから、パルコの依頼でこの坂に名前がつけられたと伝わる。土地の歴史ではなく、一つの店の内装から街の呼び名が生まれたというエピソードは、渋谷という街の作られ方をよく表している。 周辺の店は坂の愛称に合わせて南欧風の街づくりを進め、カフェや雑貨店、衣料品店が集まる独特の一角になった。坂の上には現在ライブハウスも立地し、渋谷のカルチャーがこの狭い坂道に凝縮されている。『ガールズバンドクライ』第3話では、上京した仁菜たちが渋谷の街を歩くシーンの背景にこの坂が使われ、都会の文化に触れる仁菜の心情を映す場面のひとつになっている。地方から出てきたばかりの仁菜にとって、この坂の異国的な佇まいそのものが、渋谷という街への驚きを象徴していたのかもしれない。 石段混じりの狭い通りのため、通行人が多い時間帯に立ち止まって撮影すると他の人の妨げになりやすい。店舗前での長時間の撮影は控え、坂の端に寄って短時間で済ませたい。演劇と古着とライブハウスが混ざり合う渋谷の街らしさを、この短い坂道を歩くだけで味わえる。坂の上まで上り切ってから振り返ると、坂の名前の由来になった南欧風の街並みをひとつの視界で確認できるはずだ。 渋谷パルコ自体、若者向けファッションと文化の発信地として長く渋谷を代表してきた商業施設であり、スペイン坂はその麓に位置することで、パルコへ向かう人の流れを自然に集める役割も担ってきた。一軒の喫茶店の内装がきっかけで坂全体の名前が生まれ、さらにその名前に合わせて周辺の店が街づくりを進めていったという流れは、渋谷という街が常に「名前」や「イメージ」から新しい文化を生み出してきたことを象徴している。仁菜たちが上京直後にこの坂を歩く場面は、地方から出てきた者が渋谷という街のイメージそのものに触れる瞬間を描いているとも読み取れるだろう。
アクセス: JR・東京メトロ・東急・京王「渋谷駅」より徒歩3分